ガーデニングの趣味が高じてガーデンレストランを営んでいる母を連れて、イギリス旅行をした時に。
貴族のお城ガーデンの中に遠くを見渡させるように塔が建っていて、階段を上る途中に幾つか小窓がありました。
この土地の貴族なのか、領主なのかエンブレムをステンドグラスにしてはめこんでありました。
絵付けをする人なら、そう手間がかからないことはお分かりと思いますが、そしてなぜシルバーステインがはみ出したままでも組んじゃったのか謎ですが。
柄が細かくて、日常使いの素朴な窓にも装飾があるって美しいなぁと思いながら眺めました。
剥がし技法の説明をすると、ガラスピース全面に茶色のグリザイユを薄く均一に刷毛で伸ばします。
乾いてから、先がとがった木や針などで模様にしたい線を描きながらグリザイユを剥がします。
剥がした部分が写真だと白っぽく見える線で、ガラスが出ているので光が透って明るく見えます。
原理は単純ですが、まずグリザイユを伸ばすのにバジャーブラシでフェザータッチで乾くまでなぞるという作業に
多分、修行が数年かかります。はい。
グリザイユの混ぜ方、溶き方、乗せ方、、、剥がすより乗せるところが難しいです。
私も学校で2年間、真面目にやりましたが、ほぼ完ぺきというピースは一つも無かった気がします・・・
完璧じゃなくても作品全体の良し悪しに必ずしも影響するわけではないと思いますし、本場のヨーロッパでは大雑把な線や剥がしもよく見かけ、細かい部分にこだわると巨大な窓にパワーを与えることが難しくなる点もあると思います。
しかし、何でも下手より上手い方が良いでしょう。ちゃんと出来るけどやらないのと、出来ないは違いますから(・・;
他の絵付けの部分を見るとシルバーステインもあるので3回は焼いていると思います。
剥がしの植物柄が非常に細かくて、近くにウイリアムスモリスの美術館などもあり、植物柄にこだわった時代だったのかもしれません。
私が見た緩やかな丘陵、広いガーデン、優しいイギリスの日差し、この地方の白っぽい石で出来たタワー、狭い階段の合間にある小窓、これは当時から変わらない景色だと思います。
今月、実家で西澤安澄さんのコンサートがあり、東京に帰ってからも西澤さんのファリャの会に参加しました。
マヌエル・デ・ファリャという作曲家を始めて知りましたが、しっとりとして影があるように感じました。
西澤さんは現地にも長くお住まいで、作曲家の原風景を訪ねたり、交友関係や時代背景などを含めて
ご自分の解釈と表現をされていて、素晴らしい演奏でした。
私もスペインやパリは何度か訪れているので、風や日差しを思い返しながら聴くと、また違って聴こえます。
歌うように弾く西澤さんの音色は、少しずつ違う生演奏でまた聴きたいです。
私のように出不精で人見知りでも、少しの尊敬できる様々なジャンルのアーティストの方と少しの時間を共有できることが
本当にありがたく幸せだと思っています。
技法は表現したいことや用途に合わせて、その場に「丁度よい」ことが大事だと思います。
この窓は、ガラスの色が多いわけでもなく、絵付けもゴリゴリしているわけでもなく、少しミスもあるけれど
これが美しくこの場に完璧な調和をもたらしていると思いました。
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